岡目八目

2017 囲碁タイトル戦回顧

七冠2度目“井山イヤー”

(寄稿連載 2017/12/19読売新聞掲載)

 まさに“井山イヤー”だった。2017年を六冠で迎えた井山裕太棋聖は、1月からの棋聖戦七番勝負で、河野臨九段を4勝2敗で下し、5連覇で名誉棋聖を名乗る資格を得ると、その後もタイトルを防衛。10月には名人を奪還し、囲碁・将棋界通じて初の2度目の七冠を達成。今年の七大タイトル戦を完全制覇した。

▷第41期棋聖戦七番勝負
 井山裕太4―2河野臨
▷第42期名人戦七番勝負
 井山裕太4―1高尾紳路
▷第72期本因坊戦七番勝負
 井山裕太4―0本木克弥
▷第65期王座戦五番勝負
 井山裕太3―0一力遼
▷第43期天元戦五番勝負
 井山裕太3―0一力遼
▷第42期碁聖戦五番勝負
 井山裕太3―0山下敬吾
▷第55期十段戦五番勝負
 井山裕太3―1余正麒

 井山は11月に東京で行われたLG杯朝鮮日報棋王戦の準々決勝、準決勝を連勝。来年2月の決勝三番勝負に出場する。
 その背中を追う若手の台頭も目立った。一力遼八段は王座、天元に続き、来年1月からの棋聖戦七番勝負で井山棋聖に3棋戦連続で挑戦する。関西棋院の余正麒七段は、昨年の王座戦に続き、今年は十段戦で挑戦者になった。芝野虎丸七段は竜星戦、六浦雄太七段は全日本早碁オープン戦で優勝。許家元七段は来期の棋聖戦Sリーグ昇格を決めた。
 女流碁界は藤沢里菜女流立葵杯と謝依旻女流本因坊の二強時代。女流名人戦、女流立葵杯に続き、扇興杯女流最強戦でも決勝で藤沢に敗れた謝だが、女流本因坊戦でタイトルを奪還した。

▷第36期女流本因坊戦
 謝依旻3―2藤沢里菜
▷第4回女流立葵杯
 藤沢里菜2―1謝依旻
▷第29期女流名人戦
 藤沢里菜2―0謝依旻
▷第20期女流棋聖戦
 謝依旻2―1牛栄子

 一方で、人工知能(AI)の進歩は著しい。5月にはアルファ碁が「世界最強」の柯潔九段に3連勝。AI流はプロ棋戦でも流行し、布石の新たな可能性を広げている。(川村律文)