岡目八目

2018 囲碁タイトル戦回顧

井山追う若手が台頭

(寄稿連載 2018/12/19読売新聞掲載)

 2度目の「七冠」を達成し、将棋の羽生善治竜王とともに、囲碁・将棋界では初めての国民栄誉賞を受賞した井山裕太棋聖。2018年最初の七大タイトル戦だった棋聖戦では一力遼八段をストレートで下し、相変わらずの強さを見せたが、碁聖、名人を失って五冠に後退。「疲労が蓄積しているのでは」との声も聞かれた。山下敬吾九段との「第44期天元戦五番勝負」も2勝2敗。19日の第5局で雌雄を決することになる。

▷第42期棋聖戦七番勝負
 井山裕太4―0一力 遼
▷第43期名人戦七番勝負
 張  栩4―3井山裕太
▷第73期本因坊戦七番勝負
 井山裕太4―1山下敬吾
▷第66期王座戦五番勝負
 井山裕太3―2一力 遼
▷第43期碁聖戦五番勝負
 許 家元3―0井山裕太
▷第56期十段戦五番勝負
 井山裕太3―0村川大介

 井山の背中を追う若手の台頭も目立った。許碁聖が七冠を崩し、一力八段は王座戦でフルセットまで戦った。芝野虎丸七段は日中竜星戦で中国の柯潔九段を破り、農心杯では韓国の安国鉉八段を倒すなど活躍した。
 女流碁界は藤沢里菜女流立葵杯が3冠を獲得。上野愛咲美二段が謝依旻六段から女流棋聖を奪取し、藤沢・謝の「2強」に割って入る形になった。扇興杯女流最強戦は、万波奈穂三段が優勝した。

▷第37期女流本因坊戦
藤沢里菜3―1謝 依旻
▷第5期女流立葵杯
 藤沢里菜2―1謝 依旻
▷第30期女流名人戦
 藤沢里菜2―0矢代久美子
▷第21期女流棋聖戦
 上野愛咲美2―0謝 依旻

 人間を超える実力を付けた人工知能(AI)は、昨年以上に囲碁界に影響を与えている。「序盤早々の三々入り」「小目大ゲイマ締まりへのツケ」などの手法は、プロ棋士にも多用されている。(田中 聡)