◆「大三冠」へ山下本命　片岡九段
◆ベテラン依田 好調　小松九段

趙治勲以来２人目

　――Ａリーグの順位１位は前期七番勝負でフルセットの末に敗れた高尾九段だ。
片岡　内容的には五分五分の勝負で、素晴らしい七番勝負だった。
小松　その後は少し疲れも見えるようだが、リーグの戦いを引っ張っていく存在であることは間違いない。

　――２位には山下名人・本因坊。棋聖獲得となれば、趙治勲二十五世本因坊以来、史上２人目の大三冠も夢ではない。
小松　相変わらず成績がいいね。棋聖戦への愛着は強く、一番狙っている人ではないか。趙さんの時代は小林光一さんとの２強という印象だが、今は張さん、山下さん、羽根さん、高尾さんに井山さんを加えた５強時代。これで大三冠となったら、すごいことだ。
片岡　名人、本因坊の防衛戦がリーグと重なる。日程は厳しい。両タイトルの防衛が前提となるが、山下さんの気性からすると、当然狙ってくる。

安定感抜群の河野

　――柳九段、河野九段が続く。
片岡　柳さんは最近すごく内容がいい。調子が本格化してきたと見ている。
小松　河野さんは安定感抜群だ。
片岡　名人、本因坊リーグでも活躍しており、５強を追いかける一番手。名人リーグは５連勝中だ。本来の実力が出てきた感じだ。
小松　地に辛い印象だったが、力強さも出てきた。

　――ベテランの小林九段、王九段が新参加だ。
片岡　若手の生きのいいところをやっつけて出てきた。同世代としては励みになる。

バランスの井山

　――Ｂリーグは前期挑戦者決定戦で敗れた井山天元・十段が１位だ。
片岡　バランス感覚が素晴らしい。辛抱もできる。
小松　最近、どの碁も秒読みになる。丁寧に打っている証拠だろう。秒読みも苦にしない。二冠ではあるが、大きなものを持っていないと寂しい感じがする。井山さんとしては、七番勝負に出なければ意味がないと思っているのではないか。

　――２位の依田九段はどうか。
小松　本人は挑戦者にならなければつまらないだろうし、本気で狙っているだろう。調子もいい。

　――　３、４位は羽根碁聖、山城九段の中部勢だ。
片岡　羽根さんもビッグタイトルがほしいだろう。棋聖２期の実績があり、棋聖戦は相性もいいはずだ。
小松　羽根さんと言えば秒読みだが、最近はそうならないことがある。国際戦の影響もあり、早い着手を心がけているのかもしれない。井山さんに勝ち越しており、面白い位置にいる。
片岡　山城さんは最近、すごくいい。
小松　芸を感じますね。打ちたい手を打っている。

６２歳淡路に迫力

　――　新参加は６２歳の淡路九段と溝上八段。
片岡　淡路さんが勝ち上がってきたのは立派。力強さ、パンチ力が復活した感じだ。
小松　昨年の暮れあたりから、ぐっと良くなった。若手にも圧勝している。
片岡　対局する姿にも往年の迫力が戻ってきた
小松　溝上さんは安定している。１１期ぶりとは意外だ。

　――　Ａリーグの見所は。
片岡　高尾さん、山下さん、河野さんの三つどもえの争い。そこにベテランがどうからんでくるか。
小松　高尾さんと山下さんが２戦目で当たる。これが勝負所だろう。河野さんは終盤で２人と当たる。
片岡　私は山下さんを本命と見たい。最近の調子の良さに、大三冠への期待もある。
小松　やはり順位は大きく、高尾さんを推したい。連続挑戦となる。３位以下だと、全勝しないとリーグ優勝は難しい。

　――　Ｂリーグはどう見るか。
片岡　井山さんを中心とした戦いの中で、羽根さんがどう対抗するかだろう。２人は最終戦で当たっている。最後まで目の離せない展開となる。
小松　私は依田さんに期待したい。井山さんとはほぼ五分だし、羽根さんには勝ち越している。順位もいい。

　――　ズバリ、挑戦者はだれか。
片岡　山下さんと井山さんの挑戦者決定戦となると見るが、山下さんに乗りたい。やはり大三冠の夢は魅力だ。山下さんは目標があると強くなるタイプだし、体力も十分だ。
小松　私は依田さん。今期リーグはベテランに風が吹いている。そこに懸けたい。依田さんは子ども教室も始め、若いエネルギーももらっている。