◆若さはつらつ　一力七段　林海峰名誉天元
◆依田九段　すごい執念　大竹英雄名誉碁聖

　――井山裕太棋聖が七冠制覇を達成しました。
大竹「囲碁界にとって素晴らしいニュースです。注目され重圧がかかる中で、しっかりと結果を出した。その精神力はすごいのひと言。とてつもないエネルギーを感じます」
林「井山さんの碁には隙がない。パワーもあって相手をなぎ倒す。そして抜群の安定感。ずば抜けた存在です」
大竹「スターの誕生で、囲碁ファンの裾野が広がりますよ。それがうれしい」
林「棋聖戦でも挑戦者は井山さんという存在にぶつかることになる。それを考えるとリーグも例年以上に緊張感を持って進行するでしょう」

　――棋聖戦は第４０期からシステムが変わりました。
大竹「若い棋士には特に励みになるシステム。大きな刺激になっている」
林「トーナメントは一度負けるとおしまいですが、リーグは腰を据えてじっくり打てる。若い人には貴重な場。棋士の研究会も増えているようです」
大竹「挑戦者決定トーナメントも面白い。これは力が入ります。勝ち上がるほど勢いがつくから、どきどき勝負になるでしょう」

　――Ｃリーグは３２人の戦い。予選トーナメントで４連勝あるいは５連勝しないとリーグ入りできない。
大竹「ベテランと若い人がバランスよく入っている。本田邦久九段は７０歳。立派だね。最年少は１６歳の芝野虎丸二段。若い人は寝て起きたら強くなっているから、楽しみです」
林「優勝には５連勝しなければいけないんでしょう。このメンバーで５連勝は相当きつい」

　――Ｂリーグは２組制。どう見ますか。
大竹「１組には趙治勲二十五世本因坊がいる。やはり本命か。許家元三段、伊田篤史八段には大注目」
林「２組は結城聡九段、羽根直樹九段が少し抜けている感じ。しかしＢリーグでは不本意のはずです。２人にとっては正念場かもしれない。ベテランが多いけど、２、３年のうちには若手がどんどん来るでしょう。自分の若い頃を思い出しても、強い人に勝つと勢いがつき、だんだんその気になる。それが自信となり実力となってくるものです」

　――Ａリーグは８人の戦いです。
林「独特なパワーの持ち主がそろっている。このリーグはだれにでもチャンスがある」
大竹「張栩九段がカギを握っている気がする」

　――Ｓリーグは挑戦者に最も近いリーグです。激戦が予想されます。
大竹「１８歳の一力遼七段がＡリーグから上がってきた。依田紀基九段、高尾紳路九段はきれいな碁を打つ。いい勝負が見られそうです」
林「やはり若い一力七段、村川大介八段に注目したい」

　――山下敬吾九段は３年連続で挑戦者となりました。
林「立派です。碁の内容もすごい。険しく、ひとつ間違えたらダメという碁。常に気力が充実していないと打ち切れない」
大竹「もちろん山下さんは本命ですよ。４年連続の挑戦も期待したい。その一方で、ほかの人も見てみたい。だから、あえて山下さんを外して予想したい。すると私は依田九段。５０歳で踏ん張りどころ。碁に懸ける執念はすごい」
林「私は期待を込めて一力七段。パワーがあるし、はつらつとしている。新しい図を求めて挑戦している」