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岡目八目

読売新聞 2005/11/28掲載
青葉かおりさん

(1)母の言葉を胸に頑張りたい(寄稿連載)

 囲碁と将棋、どっちがいい? 6歳のとき、とつぜん父に聞かれました。トランプ、オセロ、五目並べとゲームに夢中になっている私を見て、両親は本格的になにか習わせようと思ったらしいのです。私は将棋というゲームは知っていましたが、囲碁という言葉はその時初めて聞きました。
 「将棋はまだ男女の差が大きいよ。囲碁界の方が女性は活躍できると思うけど、どっちが好き?」
 「イゴかな……」
 「じゃあ、囲碁を教えてあげようか」
 これが、今から20年前のことでした。やるからにはプロを目指しなさいと言われ、「もう、将来の職業がきまっちゃうんだ」と、なんだか妙な気分になったことを覚えています。毎日、父が出す問題を解き、週2回、近くの碁会所と日本棋院中部総本部に通いました。小学4年のときプロの養成所に入りました。そのころには将来は囲碁のプロになるものと思いこんでいました。17歳でプロ試験に受かったのですが、なるまでの2、3年は本当に苦しかったです。プロ予選リーグで負けた帰り道、地元の名鉄清水駅で電車を待っていると、目の前のビルの光がぼやけてきて、このまま電車に吸い込まれてしまうのではないかと思ったこともあります。
 プロになるとすべてがまぶしくて新鮮でした。雑誌でしか見ることのできなかった有名棋士が気さくに声をかけてくれます。テレビ取材を受けたり、初めてのことばかりでした。薄暗い地下道から、まぶしい太陽の下に飛び出したような気分でした。小さいころから2歳上の姉に隠れるように、どちらかというと内気に育っていたので、この世界に慣れるまでだいぶ時間がかかりました。
 そして、今年はロ10年目。明るい世界でも時には影がさすこともありますが、プロになることが決まった時に母が言った言葉、「これからは何でも自分の責任でくじけることなくやっていきなさい」を胸に頑張りたいと思います。
(囲碁棋士、四段)
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