岡目八目

青葉かおりさん

青葉かおりさん

(2)あこがれの小川先生と同じ立場

(寄稿連載 / 2005.12.05読売新聞掲載)

 「NHK杯テレビ囲碁トーナメント」の司会を担当するようになって、1年半がすぎました。この番組は今年で53年目を迎えます。タイトル保持者と賞金ランキング上位者50人によるトーナメント戦を1年にわたり、毎週日曜日に放映しています。

 私は囲碁に関しては専門家ですが、アナウンスはまったくの素人なので、テレビで話すときはすごく緊張します。はじめは衛星放送でタイトル戦を中継しましたが、あまりのプレッシャーに終わったあとは高熱を出して寝込んでしまいました。またテレビで自分の姿を見ることはとても恥ずかしく、私ってこんな変な声なんだ、変な顔してる、とすごく落ち込みます。きっと実際以上に自分のことを良く思っていたんですね。よく見せよう、上手(うま)くやろうとすると変に力が入りすぎるので、今はありのまま素直に自分を出すこと、観(み)る方に楽しんでいただけることを心がけています。

 実は私とNHK杯の付き合いはかなり古いのです。囲碁をはじめた6歳のときから、日曜のお昼はこの番組を見ていました。当時の司会は小川誠子(ともこ)四段です。プロ同士戦う緊張感や、解説の話が面白くて毎週楽しみにしていました。しかし幼かったせいか、1時間40分ずっと集中力が続かず、必ず途中で眠くなってしまうのです。はっと気付くと対局が終わっていたなんてことも度々ありました。きっと分からないなりに何とか囲碁を理解しようと頭をフル回転しすぎて疲れてしまっていたんですね。

 そのころ私の父は東海銀行に勤めていて、小川先生のお父様も同じ銀行にいらしたそうです。今思えば、父は私を小川先生のような女流棋士にさせたい、と願って囲碁を教えたような気がします。そして私も小川先生にあこがれました。それから20年後、私が小川先生とちょうど同じ立場で、番組の司会を担当させて頂けることはなんとも不思議な気がします。運命というには大げさですが、ありがたい巡り合わせに感謝しています。

(囲碁棋士、四段)