岡目八目
(2)囲碁の世界でも「望子成龍」
(寄稿連載 2007/05/28読売新聞掲載)各地方で行われている段級位大会の人数と回数によって、その地方の囲碁の普及率などが分かります。
上海棋院院長の単霞麗(元中国象棋全中国女流チャンピオン)は、私と私の夫趙国栄(中国象棋の全中国棋戦で数多く優勝、現在、黒竜江棋院院長)の親しい友人ですが、彼女によると、「上海では毎月段級位大会が行われており、毎回2000人以上の子供(4歳から12歳まで)が集まる。この冬休みには3000人も集まった。上海の各区で回り持ちですが、皆喜んで引き受けます」とのことです。
というのは、大会を開くことによって、囲碁の宣伝、普及になるだけでなく、かなりの収益が得られるからで、参加料100元(約1600円)、段級位認定書料(高段になるほど高額になる)やスポンサーからの広告費が入り、その半分は棋院に納められますが、その半分は主催した地区の収益になるのです。その他、中学校の個人戦や団体戦も年1回行われており、個人戦の上位6人は大学入試の際に20点も採点にプラスされることになっています(ただし、入試2年以内の成績が有効)。中国象棋、チェスも同待遇です。その点、囲碁は文化ではありますが、同時によい商売でもあるのです。上海では子供に囲碁を教えることで生計を立てている人が1000人もいるといわれており、なかには月収が3万元にもなる人があり、少ない人でも何千元か得ているとのことで、なかには、IT関係のエリートが会社を辞めて囲碁の教師に専念しているケースもあるそうです。
前回も申し上げましたが、中国の一人っ子には、父母はもちろん父母のそれぞれの両親、合わせて6人が1人の子供に期待しており、「望子成龍」を願っているのです。中国の親は自分は節約しても子供のためにはいくらでも出費を惜しまない習慣があります。その点からも、中国の囲碁人口は老人よりも圧倒的に子供が多くなっているので、中国の囲碁の未来は明るいといえましょう。
(中国囲棋協会五段)