岡目八目

牛力力さん

牛力力さん

(3)プロを目指し「独木橋」渡る

(寄稿連載 / 2007.06.04読売新聞掲載)

 中国では毎年1回、プロになるための入段試験がありますが、まさに「独木橋」を渡るようなもので、狭くて危険なコースといえます。

 私のかつての国家チームの友人で、現在、国家チームのリーダーである華学明七段はその間の事情を、「いろいろな選択を経て、最後に百数十人の子供が選ばれ、スイス方式で競って、20人ぐらい(なかに女性は2人ぐらい)がプロ初段になれます。選手たちに最後まで頑張ってもらうために事前に入段の人数は発表されていません」と、話してくれました。

 今、中国各地の町々でも囲碁が盛んですが、趣味としてなら自分の町でも十分楽しめるでしょうが、プロになるために北京に行く子供が多いとのことです。北京にはトッププロが集まっていますし、有力な道場もたくさんあるからです。しかし、北京での生活費や学費、それに子供に誰かが付き添って行かねばならず、場合によっては、誰か仕事を辞めねばならなくなるとのことです。

 河南省の楊鼎新君(8)は3年半前に碁を覚えて、現在、60歳の祖父が付き添って北京で碁を猛勉強中といいます。弁護士の父は「もう30万元(約480万円)以上かかりました。貯金は使い果たし、二つあった家の一つを担保にして銀行から融資を受けています。絶対にプロになってほしいものです」と話していました。

 このような金銭面の負担だけでなく、なかには学校を辞めて、碁に専念する人もいるとのことです。

 中国棋院の元院長、陳祖徳九段は「そこまでやるのは危険だというのですが、いくら言っても後が絶えないのです」と慨嘆されておりました。確かに、プロ棋士になれば、棋院などから人並みの給料が保証され、その他、対局料、賞金、お稽古(けいこ)料などの収入もあり、よい職業といえましょう。

 しかし、その前に大難関の入段試験に合格すること、あの「独木橋」を1人で渡らなければならないのです。

(中国囲棋協会五段)