岡目八目
(4)子供の囲碁教育に強さの源
(寄稿連載 2007/06/11読売新聞掲載)今年の冬休みに小学1年生の娘(7)を連れて故郷のハルビンに里帰りをしました。市内にある黒竜江棋院はロシア風の建物で中国の棋院のなかでももっとも由緒のある建物だそうです。
文化大革命の際に、かの有名な聶衛平先生が黒竜江に下放されて、以後、先生のお陰で黒竜江の囲碁のレベルが大分アップしたとのことです。現在、黒竜江棋院で子供たちの碁の指導を担当しているのは、かつて私と碁の勉強を一緒にしていた仲間の魯建五段ですが、「黒竜江の碁の普及率はまだ南方と比較になりませんが、それでも黒竜江出身のプロが三十数人になりました」と話されました。
私の娘は碁を覚えてからまだ1年余ですが、この機会に黒竜江の段級位戦に参加させていただきました。400人近くの子供たちが大会に集まりましたが、娘より年下の子が大勢おり、なかでも大慶市からきた李陽ちゃんという女の子は娘より1歳年下なのに棋齢は1年も長く、その力強さと冷静な判断には観戦していた私もびっくりで、日本では、子供なりに強いとほめられていた娘もあっさり負かされてしまいました。
黒竜江に限らず、囲碁の先生が幼稚園や小学校に行って教えるケースが非常に多くなりました。なかには幼稚園のように1日子供を預かって朝から晩まで碁をさせる塾までできており、李陽ちゃんが通っている李立君塾は中国でも有名な塾です。李立君先生はアマ五段ですが、2人のプロ棋士を常に招いて塾生を教えており、塾を開いてから16年間で16人のプロを育てたとのことです。李立君塾のある大慶はハルビンから車で2時間ほどのところで、見学に行きました。数十人の子供たちが李先生の講義を静かに聞き、別室ではプロの指導で碁を打ったり、詰め碁をしており、これなら小さい子供が強くなるのは当然と思いました。
囲碁は論理的な思考や情緒の安定などに役立つので、日本の子供たちにももっと普及することを望みます。
(中国囲棋協会五段)(おわり)