上達の指南

金賢貞四段の「シチョウにご用心」

(2)抜き利き味なくお薦め

(寄稿連載 2017/11/21読売新聞掲載)

 シチョウに取られたとき、自分の可能な範囲で丹念に読むことが必要です。「取りあえずひとつ逃げてみて……」は絶対に禁物。「ひとつ逃げると7目の損」と言われているように、一局の命運を左右しかねません。

 【テーマ図】一時よく打たれた布石で、白10のスベリに黒11の挟みはこの一手。これで黒12と受けるのは、白Aに開かれて白に理想形を与えます。

 白12の三々に黒13以下19のシチョウの抱えまでは必然の運び。ここからが本題です。

 白はひとまず20と小ゲイマに締まりますが、これはただの締まりではありません。なんと、右上のシチョウ当たりにもなっているのです。皆様お気づきでしたか。

 これに黒はどう対応したらよいでしょう?

 【1図】黒1の開きは△のシチョウの逃げ出しを防ぎつつ、黒の模様を広げています。苦心した自信ありげな一手ですが、実はこれは問題でした。

 白2の肩突きが絶好のシチョウ当たり。黒3に白4まで、黒は下辺で苦しい戦いを強いられます。

 【2図】黒1の抜きが素直な手で、後に何の利き味もなく私の一番のお薦めです。黒1ではAと働いて打つ手や、囲碁AI(人工知能)のようにBと中央に働かせて打つ手もあります。

 白2以下は一例ですが、白8まで荒らされても黒9と飛んで、黒は十分打てます。

●メモ● 金四段は「あさひ囲碁教室」を開いている。生徒は4歳から高校生まで幅広い。工夫しているのは、子供の囲碁用語だ。「石をいじめる」は禁句。「死んだ」を「取られた」と表現し、「シチョウ」は階段の絵で説明している。地についても、野球好きの少年には「ナゴヤドームだよ」と表現することも。

【テーマ図】
【1図】
【2図】