上達の指南

河野臨天元の「タイトルへの道」

(2)先手を取って番碁初勝利

(寄稿連載 2006/02/20読売新聞掲載)

◆第31期天元戦 第2局 (白・河野臨七段 黒・山下敬吾天元)

 天元戦の挑戦権を獲得して真っ先に思ったのは「五番勝負を打てるのがうれしい」ということでしたが、山下さんには2年前の天元戦挑戦者決定戦で負かされたのを始めとして、早碁以外では一度も勝ったことがありませんでした。でも内容自体は悪くないので苦手意識はなく「思い切ってやるだけ」と考えて、初のタイトル戦に臨みました。
 でも、その意識が強過ぎたのでしょうか。開幕局では序盤から過激にやり過ぎたことが裏目に出て、一方的に負かされてしまいました。「またやられてしまった」とは思いましたが、それ以上に「次の第2局をどうしよう」という思いの方が強かったです。

 【テーマ図】 第2局の序盤です。私の白番ですが、右下で黒2のハサミに対し、白3とツケたのが割と珍しい定石選択だと言えるでしょう。というのも黒16までの分かれは「黒良し」が定説で、「これは定石ではない」と言い切る人もいるくらいです。
 しかし私は「白が先手でもあるし、言われているほど白は悪くない」と思っており、この碁では「先手を取って左上の白17に回れば打てる」という判断がありました。
 右下で後手をひくと、左上を黒イとかけつがれるのを嫌いました。右上の大ゲイマじまりとのバランスもよく、上辺が黒の理想的な構えとなってしまいます。

 【1図】 テーマ図後の進行です。山下さんの黒13のはねが甘かったようで、白14から20と地を持って治まることができては、「打ちやすい碁になった」と思いました。

 【2図】 黒13では、黒1と押さえ込んで戦ってこられるのが嫌でした。白2以下の進行が予想されますが、黒7と飛び出し、これは互角の競り合いだったでしょう。

●メモ● 第31期天元戦五番勝負の結果。第1局=山下、白番6目半勝ち。第2局=河野、白番5目半勝ち。第3局=河野、先番中押し勝ち。第4局=山下、先番中押し勝ち。第5局=河野、白番4目半勝ち。

【テーマ図】
【1図】
【2図】