上達の指南
(2)驚きの「手抜き」で様子見
(寄稿連載 2006/12/18読売新聞掲載) ◆三星杯予選 (白)安 英吉五段 (黒)安藤和繁二段
最近の新手の特徴に「手抜き」があります。従来の観念でいくと、序盤、定石などで石が接触したら手抜きは考えられないことでした。ところが「手抜き」という新手があるのです。
国際棋戦の三星杯予選で、韓国の有望な若手である安五段がユニークな手抜きの新手を見せてくれました。
【テーマ図】 白1の両ガカリに黒2以下6の押さえまでは、古来ある定石ですが、ここで手を抜いて白7と三々に入ったのには驚きです。
白7は、いわゆる様子見の手ですが、善悪は別にして考え方の柔軟さ、器用さには敬服しました。
黒は気合で8と右下隅を連打し、白も9、11と右上隅を続けて打ち、思わぬ分かれとなりました。
果たして、白7にはどのような策があるのでしょうか。
【1図】 普通は白1と渡り、黒2となりますが、これは白は下辺を放棄しています。次いで、白3と三々に入ると黒4から押さえるに決まっていて、これは白面白くありません。
そこで、右下隅の態度を決めずに、先に右上隅に入り黒の応手を聞いたわけです。
【2図】 白1に黒2と押さえれば、白は3のハイを一本だけ打って5とハウつもりです。黒6に白7以下なら、前図と違って右上隅の黒の押さえる方向がよくありません。
【3図】 黒1と上方から押さえれば、白2のハイ一本から今度は白4とツギます。黒5以下白8となり、白は下辺と右方を50%ずつ打った格好になります。
【4図】 続いて黒は9と下がりますが、後に白A、黒B、白Cと粘る味があり、気持ちよく取れているとはいえません。
右上隅を利かしと見て、白は10から戦いを進めて行くことになります。