上達の指南

結城聡九段の「今年この一手」その三

(2)二手一組の構想に感心

(寄稿連載 2009/12/15読売新聞掲載)

 ◆第34期棋聖戦リーグ (白)九段・高尾紳路 (黒)七段・李沂修

 今年後半、本因坊リーグに続いて名人戦リーグにも入ることができました。最終予選決勝の相手は、本因坊が大矢浩一九段、名人が羽根直樹本因坊でした。羽根本因坊には第29期棋聖戦七番勝負で挑戦し、3勝4敗で退けられた後、7連勝させてもらっています。両リーグに同時に入ったのは15年ぶり2度目で、うれしいの一言です。何とか挑戦権を狙いたいものです。

 【局面図】 左上で白18とつけ、黒19の応手を見てから、白20と肩をついた二手一組の構想に感心させられました。白20に対しては、黒イの押し上げが第一感ですが――。

 【参考図1】 それには白1と切ります。白7まで、局面図の白20の肩ツキがシチョウ当たりという仕掛けです。

 【参考図2】 局面図の白20と黒イの交換を先に打ってから、白1とツケると、黒2と上からハネられるでしょう。黒12まで、定石のような進行をたどるとしたら、先の交換が悪手になっています。部分的には白20はロが普通とされています。

 【実戦図】 黒27は疑問。黒Aと飛び、白Bに黒35、白33、黒C、白D、黒Eとつけ下がって一局の進行だったでしょう。

 白40が左右を見合いにした、高尾九段らしい重厚な手で、黒43までは少しつらい形です。
 黒45のポン抜きには賛否両論ありましたが、僕は一手の価値はあると思っています。

●メモ● 結城九段の最近の著書は5月に出た「決定版囲碁大会必携!大斜・村正・大ナダレ」(誠文堂新光社刊、1700円、税別)。難解な定石ばかりを三つ選び、その運用のノウハウを説き明かしているところは、かつて力戦派と呼ばれ恐れられた結城九段らしい。

【局面図】
【参考図1】
【参考図2】

【実戦図】