上達の指南

結城聡九段の「今年この一手」

(1)急所打ち込み激しい攻防

(寄稿連載 2018/12/12読売新聞掲載)

 最近、井山裕太棋聖は国内のタイトル防衛戦、海外棋戦のハードスケジュールなどが影響しているのか、疲れが少し目につくようで、気にはなります。
ファンの方から「強さの秘密を教えてください」とよく聞かれるのですが、僕にもよく分かっていません。

 苦しい碁でも簡単にあきらめないで、勝負を求めて可能性を追う。その執念と粘りはだれにもまねのできない、すさまじいものだと敬服しています。

 【局面図】右上、▲のツケに対し、△のノビは落ち着いています。左下隅、▲と切られ、△とノビました。黒はどう考えていたのでしょう。

 【変化図1】黒1のツギが第一感です。黒5と7の手順が大切で、これを逆にしますと、白2子を捨てられるかもしれません。黒11から13とかけつぎ、黒の外回り作戦は一応目的を達しました。

 【変化図2】実戦図、黒1のアテに白2と出たところで、黒1の抜きも考えられます。黒3から5と開いてこれも一局です。一力八段は不満と見たのでしょうか。

 【実戦図】白2から4、黒3から5と抜き抜きの変化になりました。

 白14の打ち込みに、黒15、17のツケノビから19と切りました。白24の開きに、黒は急所Aと打ち込み、激しい攻防が始まります。ポン抜きをどう生かすか、ここでは「やや白持ちか」という意見が多かったようです。

●メモ●  結城聡九段の野球好きはよく知られている。年齢を重ね、自分ではほとんどやらなくなった。オリックスのファンだったが、7歳で小学2年の次男に感化され、阪神からヤクルトに傾きつつある。9月、甲子園球場で阪神-ヤクルト戦を観戦したという。

 第42期棋聖戦七番勝負第1局
 白 棋聖 井山裕太
 黒 八段 一力 遼

【局面図】
【変化図1】
【変化図2】

【実戦図】