上達の指南
(3)大激戦 予想つかぬ展開
(寄稿連載 2018/12/26読売新聞掲載)今年、石井九段は三大棋戦の一つ、棋聖戦リーグに入りました。76歳でこれまでの最年長記録を更新したのは、井山裕太棋聖の師匠として、胸を張れる快挙と言えるでしょう。
【局面図】最近、黒の小目に対し、白の小ゲイマガカリから黒のハサミにケイマにカケる手が大流行しています。また、黒の出切りに、白が抑え込んでいく強硬手段も多く見られ、本譜も序盤早々から大激戦に突入していきました。
【変化図】黒1と切れば、白2とカケます。黒3から9と白2子を取りに行くのは、少し味が悪い。そこで、黒3では6と出て白に断点を作ることも考えられます。白A、黒3から白4、黒5、白10、黒ツギ、白B、黒C、白D、黒8、白E、黒7とポン抜くことになります。これはどうでしょうか。
今年7月、韓国の九段との対局で同じ変化がありましたので、その時の方向は違いますが、紹介させていただきます。
【参考図】先番の僕は、黒1から5までぐんぐん押しを決め、7と下がりました。黒19とハネては白が苦しい。白に何か誤算があったとしか思えません。このあと20手ぐらいでAI(人工知能)は「結城九段の勝利確率が98%」と判断していたそうですが、僕は大悪手を打って逆転負けしてしまいました。
【実戦図】白4の下がりが粘りのある手です。白34と抜いて白も打てそうです。予想のつかない展開でした。
(おわり)
●メモ● NHK杯で3連覇を含む優勝5回をはじめ、早碁で抜群の実績を持つ結城九段。このほどマイナビから「結城流早碁の極意」(税抜き価格1590円)が出版された。「序盤」「中盤」「形勢判断」などの5章に分かれている。「勝率アップにぜひ」と結城九段。
第43期棋聖戦Cリーグ
白 二段 佐藤優太
黒 九段 石井邦生