岡目八目

陳祖徳さんをしのんで 林海峰名誉天元

(2)「日中囲碁交流」が刺激に

(寄稿連載 2013/02/12読売新聞掲載)

 十代にして、陳祖徳さんの才能が注目を浴び、中国碁界に希望が見えてきました。

 そのころ、読売新聞社主催の日中囲碁交流が始まりました。レベルの高い日本の棋士たちに触れたのが、大きな刺激になったことは言うまでもありません。

 しかし力の差を実感して、中国の棋士たちはショックを受けました。囲碁を保護、奨励してきた政治家たちの驚きも大きかったようです。日本に追い付け追い越せと、ハッパを掛けられたと聞いています。

 陳さんは中国流布石を研究し、実戦でも多用しました。後に日本でも流行して、今でも立派な作戦として用いられています。残念なことに体が弱く、何度も大病を患って、若くして現役を退くことになります。

 中国ではどんな立派な棋士も、トップを争えなくなると後輩に道を譲ることになります。国家チームのコーチになって、指導者としての道を歩むなど表舞台からは一歩引くのです。

 古力さんや孔傑さんだって、成績が振るわなければ安泰ではありません。新陳代謝の速さが中国の強みかもしれません。

 日本では中年世代になってからタイトルを取る棋士もいて、息長く活躍するチャンスが与えられています。この私も、生きのいい若手と真剣に戦えるのは、幸せなことだと思っています。

 若手全盛の中国と、息の長い日本、どちらかが優れているということではないと思います。

(談)

中日友好協会訪日代表団として来日し、呉清源九段(左)と対局する陳祖徳さん