岡目八目
(4)指導対局でも全力投球
(寄稿連載 2013/02/26読売新聞掲載)陳さんは、自分が強くなることはもちろん、中国碁界の隆盛に力を尽くしました。国際戦の実現に貢献して、日本に追い付け追い越せで頑張ってきました。現役を引いても、いつでも全力投球でした。
カリスマのような人ですからアマチュアにも大人気です。ただし、指導碁といえども手を抜かないことで有名でした。碁界を支えてくれる大物政治家を相手にしても、対局となるとやっつけてしまう。そんなに強くないアマチュアでも、許してくれない。気持ちいいくらい全力投球なのです。
ふだんは腰が低くて、笑顔の絶えない好人物でした。うちの子どもたちも、中国に留学したときにお世話になりました。碁も打ってもらったようですが、こっぴどくやられたのではないでしょうか。いい経験になったと思います。
中国碁界は今や、次々若手が出てきて世界の碁をリードしています。同じく若手が強い韓国としのぎを削っています。うらやましい限りです。
日本は今は世界戦で振るいませんが、国内棋戦の内容は充実しています。けっして両国に劣っているわけではありません。井山裕太さんを始めとした若い力も頼もしい。いずれ、世界戦でいい成績を残せるようになるでしょう。
陳さんを見習って、私も微力を尽くしたいと思います。囲碁の発展を願い、改めてご冥福をお祈りします。
(談)(おわり)
橋本宇太郎九段(左)と記念対局に臨んだ陳祖徳さん(1973年)