岡目八目
(3)穏やかな日本文化に愛着
(寄稿連載 2015/01/20読売新聞掲載)日本語は好きですが、40歳くらいまで本は英語で読んだ方が楽でした。やはり小学3年の漢字が基本ですから、読み方の変化や慣用句などは難しかったのです。
そこで、もう一度勉強し直すことにしました。漢字検定の参考書に取り組むと、分かっていない漢字が多く、自分の漢字能力がかなりあいまいなことがはっきりしました。実際に検定試験を受けたわけではありませんが、かなり上達したと思います。
会話の方は自信があったのですが、NHKで講座を担当したことで、実はまだまだだったことが分かりました。ディレクターにも注意されましたが、投書で指摘されることもありました。それがプラスになったと思います。
日本は地域の連帯感があって、町内会とかも盛んです。地元の人は顔と名前が一致したりして、生活していて安心感が持てます。ぼくは目立ちますから、それが若いときは嫌だったこともありますが、今では得だと思っています。地元の人たちが、なにかと気にしてくれます。
なにしろ治安がいい。アメリカとは比べものになりません。アメリカだと暗くなれば公園は無人になります。
日本では隣近所がみな知り合いで、そういうのはアメリカでは少ないですね。目上の人への礼儀正しい態度とか、いいところだと思います。
私には中国出身の妻と大学生の娘が2人いて、地元で安心して暮らしています。日本文化にすっかり溶け込んで、幸せな家庭が築けたことをありがたく思っています。穏やかな日本文化がいつまでも変わらないでほしいですね。
(囲碁棋士九段)