岡目八目
(2)南米本部で若者大会初開催
(寄稿連載 2008/03/24読売新聞掲載)私は現在、ブラジル・サンパウロの日本棋院南米本部の一室を借りて住んでいます。故・岩本薫九段が棋院に私財を寄付し、それを基に米ニューヨーク、シアトル、オランダ・アムステルダムとともに建てられたもので、玄関には岩本先生が「囲碁を世界に」と揮ごうされた碑があります。
サンパウロは人口1100万人と言われ、南米最大の都市です。今年は日本人移住100周年。1月には記念イベントの先陣を切ってサンパウロで第32期棋聖戦七番勝負第1局が行われました。6月には皇太子殿下が現地の記念式典に出席される予定です。
ブラジルには日系人と日本人が約150万人いて、大半がサンパウロに住んでいます。ですから日本食のレストランが多いし、食材も日本にいるのと遜色(そんしょく)がなく、日常生活に不便はありません。果物は安く、種類も豊富で、大いに楽しんでいます。海産物はあまり良いものは手に入りませんが・・・。
昨秋から南米本部に移り住み、当初は週1回の定休日を除いて毎日午後3~7時に1階のサロンで指導碁を打っていましたが、現在は週3回程度に減らしています。中南米などを飛び回る生活はさすがに疲れがたまるので、体調に配慮したのです。
サロンで対局を楽しんだり、私の指導碁を受けたりするのは、70歳前後の日本人と日系人が中心です。ほかに50代と30歳以下の白人がそれぞれ数人います。若い人が意外に少ないので、最近、30歳以下の大会を催したところ、20人以上集まってくれました。初回にしては大成功です。
若い人に尋ねると、同じ世代の客が少ないとサロンを訪れにくいということでした。仕事が忙しくて囲碁を楽しむ時間がとれないという人は「もっと大会を開いてほしい」と喜んでくれました。
出場者が後日、誘い合ったり、友人を連れて来たりする姿を見るにつけ、彼らの将来がとても楽しみになってきます。
(囲碁棋士九段)