岡目八目
(3)中南米の若者、情熱的活動
(寄稿連載 2008/03/31読売新聞掲載)中南米の各地で囲碁愛好者と接し、幾つかの共通点に気付いて感心しました。若い世代が中心で、レベルも高く、誰もが普及活動に熱心なのです。それを支えている要因のひとつはインターネットの普及。パソコンがあれば、いつでも遠方の人と対戦できるので、国土の広いブラジルなどでも容易に仲間を増やすことができます。
指導を通じて印象に残った出来事を挙げてみると、メキシコ・トルーカの工科大学では地面にテープを張って縦横約40メートルの大盤をつくり、紙製の碁石で打つというデモンストレーションをしました。大学には以前から囲碁クラブがあり、大勢の学生が興味深そうに眺めていました。
チリのサンチャゴでは、南米大陸最南端のプンタ・アレーナスから飛行機で4時間をかけて来たという少女に会いました。その後、彼女に頼まれてプンタ・アレーナスへ出かけました。20歳前後の若者が中心となって普及活動をしているそうで、私が訪問した際は街のあちこちに手作りのポスターを張り、大きな広場で私が多面打ちをするという企画を立ててくれました。
コロンビアでは、ディエゴ君という青年が「将来は貧しい子供のための施設をつくり、囲碁を教えたい」と目を輝かせました。ブラジル・リオデジャネイロに住む中国系2世のトニー君は「ヒカルの碁」で興味を持ち、日本人会で習ったそうです。それから友人を誘ったりして、現在では常時15人ほどが例会で碁を打っているようです。
このように日本では考えられない若者の情熱的な活動が、世界各地で展開されているのです。
(囲碁棋士九段)