岡目八目
(1)フランス留学中に棋力向上
(寄稿連載 2019/01/09読売新聞掲載)◇ローツステット・エリック
初めて囲碁に出会ったのは高校一年生のときだった。「世界中のボードゲーム」の本を図書館から借りてきて、ゲーム(たとえば将棋、中国チェス、マンカラ等)を全部作って試した。
その中に囲碁もあって、やってみたら大変面白い。ルールは単純だが、複雑なパターンが出来上がる。
碁盤と碁石はなく、厚紙に碁盤の目を書きボタンのような碁石を作って打ってみた。最初は弟や父と打ち、次に学校に持って行って休憩時間に同級生と打ってみた。いつもチェスをやっていた同級生とも囲碁をやることになった。周りにちゃんと碁が打てる人がいないので、定石、死活などは何も分からない。対局が中央からスタートして、石取りゲームのようなものだったけれど、楽しかった。
定石、手筋など本当の碁を知ったのは、1998年、故郷スウェーデンの高校を卒業後、フランス西部にある町・アンジェに行ったときだった。フランス人の友人を作りたいと思っていた時に、チェスが出来るカフェの張り紙が目に留まった。しかしラッキーなことに、チェスではなく囲碁を打つ人の集まりだったので、時々参加して碁を打つことになった。
最初の一局は九子置いて、大負けして驚いた。こんなに碁が強い人が居るなんて!
相手は初段ぐらいだったろうか。それから毎週通うことになった。毎回3~5人集まって、ビールかコーヒーを飲みながら打つ小さなクラブだった。今、思い出すと懐かしい。
1年間の留学を終える頃には、5級くらいまで伸びたようだ。このフランス留学中に、将来の妻になる日本人女性にも出会った。
(東京大学助教)