岡目八目
(3)指導碁 プロの手筋味わう
(寄稿連載 2019/01/23読売新聞掲載)2009年に来日し、東京大学大学院理学系研究科の特別研究員として、物理化学の研究を始めた。化学というとラボで白衣を着て、化学物質の実験をするイメージがあるかもしれないが、私の場合はちょっと違う。計算化学といって計算機を使って、分子の特性を調べるのが私のテーマ。
日本に来てから囲碁に接する時間がかなり増えた。毎週日曜日に放映されるNHK杯トーナメントを見るのが楽しみだ。
それと近所の公民館の碁のサークルに顔を出し、地元の方々と碁を通じて交流が深まった。
また幸いなことに妻のお父さんが碁を打ち、対局するとコミュニケーションが図れる。ちなみにお義父(とう)さんとの手合は、私が白で何子か置いていただく。
また日本では囲碁の本が普通の書店で売っているのがうれしくて、今までかなり多くの碁の本を買った。
12年に埼玉県和光市にある理化学研究所(略して理研)に転職した。囲碁部があるのを知ったときは、とてもうれしかった。
週に何回か昼食後に一局打つ。理研に入ったばかりの頃は部員の皆さんに何子か置いていたが、徐々に置き石が減って今では互先で打てるようになった。
この頃は結構頑張って碁の勉強をした。通勤バスの中で詰碁を解いたりして、五、六段で打てるようになった。理研チームのメンバーとして大会にも参加できた。また文部科学省の職員で構成されている囲碁の会に誘われて、プロ棋士に指導碁も打ってもらった。プロと打つときは、相手のどの石を攻めても全く効果がないが、見事な手筋などを味わえるのが魅力だ。
(東京大学助教)