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岡目八目

読売新聞 2005/10/03掲載
郷原宏さん

(2)「竹林の友」密かな誇りに(寄稿連載)

 私が碁を覚えたころ、球界ではON(王貞治と長嶋茂雄)が、碁界では竹林(大竹英雄と林海峰)が天下の人気を二分していた。ONはやがて引退して監督になったが、竹林は今もばりばりの現役で、テレビ棋戦でその元気な姿を見ることができる。
 竹林と同じ一九四二年(昭和十七年)生まれの私は、竹林の棋譜を繰り返し暗記するまで並べることを、ほとんど唯一の勉強法としてきた。二人には迷惑な話だろうが、自分で勝手に「竹林の友」を名乗り、そのことを密(ひそ)かに誇りにしてきた。そんな私にとって、竹林の健在ぶりは、なんとも心強いことである。
 竹林の世代から日本の碁界を見渡すと、木谷実と呉清源が父、坂田栄男と藤沢秀行が叔父、石田芳夫、武宮正樹、小林光一、趙治勲、小林覚、王立誠あたりまでが弟、依田紀基、柳時熏から下が長男の世代ということになる。
 二十世紀後半の碁界は、長らく竹林とその弟、さらにその長男たちによって支えられてきたが、新世紀を迎えると同時に、羽根直樹、高尾紳路、山下敬吾、張栩(ちょうう)の四天王に代表される昭和五十年代生まれの新鋭が台頭してきた。現在、碁界のビッグタイトルの多くは、この四天王によって占められている。
 これらの若手棋士の中には、羽根泰正の子直樹、小林光一の娘泉美、武宮正樹の子陽光のように、竹林の弟たちの本当の子女が含まれている。竹林の世代からいえば、オイやメイにあたる若者たちである。
 碁はあくまでも頭脳のゲームだから、競馬と違って血統はあまり関係ないだろうと思っていたのだが、彼ら二世棋士たちの活躍を見ると、才能はやはり遺伝するものと考えざるをえない。とすれば、張栩・泉美夫妻の間には、いったいどんな天才棋士が生まれることだろう。
 「竹林の友」である私の碁がいっこうに上達しないのは、筋悪の遺伝子のせいだと思えば、いくらか気が休まるというものである。
(詩人)
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