岡目八目
(3)3歳でつくられる囲碁脳
(寄稿連載 2015/07/14読売新聞掲載)「依田塾」には一般部、通信部もあり、幼児から中学生までが「こども囲碁サロン」で学んでいます。
様々な子どもたちと接するなかで、私は囲碁は3歳までに始めるのがよい、というひとつの結論に達しました。その後にやめてもよいので、とにかく一度、3歳までに囲碁を覚えると特殊な才能が身につくと思っています。
実は予感があり、「シチョウ」の問題で実験をしてみたのです。
「シチョウ」というのは、囲碁で石を取るときの基本テクニックのひとつです。これを、3歳から中学生までの全員にやってもらいました。
私と子どもが交互に指で碁盤をさしながら、石を置かずに手を進めていきます。何十手もかけて碁盤の端にぶつかり、「取れたねぇ」と言った直後、適当な場所を指さして、「ここは何色」と尋ねるのです。
年齢がいってから覚えた子は、5段、6段になっても、必ず最初から読み直しました。ところが3歳で始めた子は全員、「なんでそんなこと聞くの?」という顔をして、ノータイムで「白」と答えたのです。驚くべきことです。碁盤にない石が見えている――と私は確信しました。
これはもう特殊な才能というほかありません。想像したものがあたかもあるように見える、という才能です。これは、囲碁でいう「読み」に大いに役立ちますし、一度身についたら一生消えません。そして、囲碁から離れたいろいろなところでも役立つのではないでしょうか。
この確信のもと、私も三男には3歳から囲碁を始めさせました。
(囲碁棋士四段)