岡目八目
(1)始まりは兄が通う囲碁教室
(寄稿連載 2013/09/17読売新聞掲載)◇しぇい・いみん
今年は私が来日して11年になります。あまり昔を思い出すこともないのですが、今回、台湾時代のことからお話ししてみようと思います。
台湾では子供に人気のある習い事に暗算があります。
叔母が暗算教室の先生でした。両親の仕事が忙しかった私を預かり、抱っこしながら教えていたそうです。
おかげで1歳半ぐらいのときに九九ができ、気づいたら暗算もやるようになっていました。
3歳で3級の試験を受けたときのことは今でも覚えています。2けたの数字を足したり引いたりする問題が10問で、制限時間は3分。
「小さいから5問解けばいいよ」と叔母から言われていた私は、5問解いて満足していました。部屋の外で母がずっと合図を送っているのですが意味がわからず、「ほかの問題も解くのかな」と気づいた瞬間に終了のベル。そこからは大泣きでした。今では1問解くのに3分以上かかります。私の暗算力のピークは3歳だったと思います。
5歳のとき、兄が通う囲碁教室で五目並べをして遊んでいました。何かの拍子に私が先生に話しかけると、先生は母の元へ行き、「あの子は誰だ」と尋ねたそうです。
母が「うちの子が何かやらかしましたか」と言うと、先生は「そうではなく、やる気があるなら囲碁を教えますよ」と言ってくださったのです。父が「強くなりますかね」と尋ねると「この子ならプロになれる」と答えたそうです。
私は話しかけたことしか覚えておらず、一体何と言ったのか今でも気になります。こうして私の囲碁人生が始まりました。
(囲碁女流三冠)