岡目八目
(2)因縁浅からぬ政治と囲碁
(寄稿連載 2012/08/07読売新聞掲載)学生時代から囲碁への興味はあったものの縁がなく、松下政経塾で囲碁同好会「未碁(みご)倶楽部」に誘われて碁を覚えられたのは幸いでした。
棋歴は浅く、政治と囲碁について語る資格はありませんが、歴史的に有名な大久保利通と囲碁の話は印象に残っています。幕末、島津の殿様に大久保のような下級武士が、お目通りすることなど出来ません。しかし、なんとしても実権を握った島津久光に公武合体論を話したいと、碁を通じ知り合った吉祥院の住職乗願に手紙を託し、見事成功したのです。利通の唯一の趣味であった囲碁が、幕末の重大な局面で役に立ったという話は実に痛快ではありませんか。
昭和になっても、政治家と囲碁の関係は相当深いものがあったようです。藤沢秀行名誉棋聖の後援会の会長と幹事長を、衆議院議長になられた福田一先生と法務大臣をされた稲葉修先生が同じ時期に務めていたといいます。また、福田赳夫総理が日本棋院から高段の免状を贈られ、「私の棋力は国家の秘密である」とおっしゃった話もあります。
昔は、審議が中断したときなど、碁を打ってリフレッシュし、審議の妙手をひねり出すという光景もあったそうです。
最近は、国会内で碁を打つという話はあまり見聞きしませんが、ことによるとインターネット対局などで楽しんでいる人もいるのでしょうか。
数年前に与謝野馨先生と小沢一郎先生の対局が実現し、話題になりましたが、お二人とも囲碁を愛するが故に、囲碁文化PRのために一肌脱いだのではないでしょうか。
(囲碁文化振興議員連盟事務局次長)