岡目八目
(3)政治にも通じる「囲碁十訣」
(寄稿連載 2012/08/14読売新聞掲載)「囲碁十訣」は孫子の兵法のようなもので、碁を打つ人なら多少は知っているでしょう。私は知らずに、「囲碁十訣で肝に銘じているのはどの項ですか」と聞かれ、赤面したことがあります。それを機に囲碁十訣を学びました。
私が最も得心しているのは第四項の「棄子争先」(子を棄てて先を争う)です。石を捨てて先手を取れという教えかと思いますが、ただ漠然と捨てるのではなく、主導権奪取につながる捨て石であれ、ということでしょう。
その他、第三項「攻彼顧我」(攻める時は自らを顧みよ)や第八項「動須相応」(敵の動きに応じる)など、無理せず自然体で柔軟に対応することが勝利につながるということでしょう。囲碁十訣を眺めていると、政治にも相通ずるものがあるようです。
人生において原理原則が大切であることを、囲碁愛好家の先輩から教えていただいたことを思い出します。「何が大切か」大局を見失わないようにとの忠告でした。
日本社会はものすごいスピードで変化しています。目の前の課題への対処に専念するあまり、自らの初心を見失わないようにしなければなりません。
この度、日本棋院から初段の免状を頂きました。免状には「修行無懈怠」とあります。怠けずに修行したという言葉でしょう。実際には、私の囲碁の先生の忍耐強さと、囲碁仲間との楽しい時間がもたらした免状です。「手段漸進」ともあり、ようやく技量が進んで初段のレベルに達したとあります。少しでも前進したことを認められたことは素直にうれしいことです。
(囲碁文化振興議員連盟事務局次長)