岡目八目
(4)脚力つけば碁も強く
(寄稿連載 2017/01/31読売新聞掲載)もっぱら下手同士でワイワイガヤガヤと碁を楽しんでいたのですが、昨年の中ごろから一念発起して指導碁に通い始めました。
木曜の午後が好都合なので、ホテルオークラの囲碁サロンで、井上初枝先生の指導を受ける運びになりました。
通常2面打ちですが、一人のときもあり、序盤・中盤の肝心な局面で、どこに打つかを教わることにしました。まず打ってみて、先生に「これでよろしいでしょうか」とうかがう。「そこは3番目ぐらいかな。もっとよいところがありますよ」というのがよくあるご教示。それではと、違うところに置くと、それもダメ……という訓練を重ねているうちに、かなり腕が上がったのか、互先の仲間に対する勝率がよくなりました。
私はいま93歳ですから、90過ぎて強くなったという栄誉が与えられた次第です。図に乗って後輩たちに「君も奮起すれば、90になっても強くなれるよ」と豪語しています。
ホテルオークラの他にもう1か所、通っているのが銀座の交詢社です。毎週水曜日の午後に大盤解説があります。大森泰志先生と小松藤夫先生が週がわりで指導に当たっておられます。お二人とも個性豊かな論客で、センス・オブ・ユーモアもたっぷり。交詢社囲碁会会員にとって楽しいひとときです。
日常生活のなかで棋力を養成する方途はあるかといえば、大ありです。私の実感では、歩くこと、これが一番です。サッサと歩きながら、自分の打った碁の成功と失敗の場面を思い浮かべる。脚力がつけば碁も強くなります。
(ブリヂストンサイクル元会長)(おわり)