岡目八目

石倉昇さん

石倉昇さん

(3)「決め打ち碁」「心得」で有効指導

(寄稿連載 / 2008.01.28読売新聞掲載)

 3年前から始まった東京大学での「囲碁で養う考える力」の授業は軌道にのってきました。ガイダンス(説明会)、日本棋院見学を除く実質11回の90分授業(前半が講義、後半が対局)で、全くの初心者が大きな19路盤で終わりまで打てるようになります。

 囲碁は、終局(一局の終わり)がわかれば一人前。その後は独学も可能ですし、碁会所やインターネットで対局を楽しむこともできます。短期間でそこまで到達するのは、東大生だからだと思う方もあるかもしれませんが、そんなことはありません。私が教えているカルチャースクールでも、多くの方が碁を打てるようになっています。今回は、東大で実践している効率のよい指導法をご紹介しましょう。

 まず、6路盤を使って入門講座を行います。すぐに9路盤に進み、5回目からは早くも19路盤を使います。大きな盤で打つと初心者は戸惑うもの。そこで私たちが導入しているのが「決め打ち碁」――途中まで模範的な対局どおりに打ち、途中から自由に打ってもらう――です。今では初めての19路盤対局で、学生全員が終局まで打てるようになります。

 「決め打ち碁」は毎回同じ形を並べるため、基本定石やきれいな石の形を視覚的に頭に入れることができる、初心者が満足感と達成感を得られるなどの効用があります。模範的な対局は一局のみとし、同じ碁を繰り返すことが大切。また、早く打つことを心がけてもらっています。

 もう一つ、大切にしているのは、「まわりにきたらごあいさつ」、「ななめにご用心」などの「心得」(考え方)を教えている点です。

 初心者のうちから記憶や読みだけで打とうとすると、時間がかかり、「難しい」と感じるようになってしまいます。囲碁は、考え方を身につければ、あとは感じたままにカンで打つことが大切。これが感性を豊かにし、囲碁を長く続けるコツでもあります。

(囲碁棋士九段)