岡目八目
(2)「笠碁」「碁泥」のため囲碁入門
(寄稿連載 2010/09/28読売新聞掲載)エー、噺(はなし)家てぇのはあまり碁は打ちませんな。もっぱら将棋ですが、子供の頃、何となく覚えたのを大人になってもそのまんま指すもんですから、もうヘボ将棋もいいとこです。有名なところで古今亭志ん生師匠主催の「待ったクラブ」というのがありました。あたしも将棋は好きで楽屋では夢中で指しておりました。
八代目三笑亭可楽師匠や私の師匠六代目春風亭柳橋師匠が、よく「笠碁」や「碁泥」といった噺をやっておりました。
両師匠が碁を打ったかどうかは分かりませんが、まあ碁は知らなくとも碁の落語は出来るわけで。泥棒の噺をするからといって、泥棒の経験が無ければ出来ないという事はありませんからナ。しかし知っていればそれに越した事はなく、早速、囲碁の入門書を買い込み、ルールだけは覚えましたが、楽屋では相変わらず将棋に夢中でした。
平成三年、事情があり三十二年間お世話になった落語芸術協会をやめ、フリーとなりました。仲間と別れた淋(さび)しさを救ってくれたのが、それまでルールしか知らなかった囲碁と川柳でした。
今回も「碁柳会」の仲間の秀作囲碁川柳です。
『新聞は囲碁欄以外走り読み』 野菊
『碁の負けを一つ増やしたにわか雨』 斜凡
『腹いせに風邪を残して会所出る』 しゅん介
(噺家、色紙も)