岡目八目
(4)映画関係者の初段争い
(寄稿連載 2012/05/01読売新聞掲載)囲碁棋士、安井算哲(二世)を主人公にした「天地明察」の撮影では、囲碁関係者の方々のお世話になった。
伝説の初手天元の棋譜は、二手目から囲碁棋士の桑本晋平さんにお願いしてアレンジしてもらい、史実とは違う展開にした。ドラマの都合上、特殊な着手であることを強調する必要があったからだ。
いきなり盤面の中央から打ち始める初手に続く二手目は白のツケ。三手目にはねると次に切りちがえるという派手な棋譜になった。
桑本さんは、撮影を担当したカメラマンの浜田毅さんに囲碁を指導することになった。浜田さんは、この映画を機に囲碁を覚えることにしたのだ。桑本さんによると、一年以内で初段になるだろうということだから、長足の進歩だ。
またこの映画で安井算知を演じた俳優のきたろうさんは、NHKの囲碁番組に出演することになった。初心者が一年で初段を目指すという趣旨の番組で生徒役をつとめている。
スタッフの間では、浜田さんときたろうさんのどちらが先に初段になるだろうかと興味津々である。
映画では、算哲と道策以外に、建部昌明と伊藤重孝という測量の技術者同士の対局場面もある。笹野高史さんと岸部一徳さんが演じているが、滝田洋二郎監督ならではのユーモラスな対局シーンになっている。
囲碁ファンの皆さんには、ぜひ九月公開の「天地明察」という映画を観ていただきたい。また、囲碁を知らない人でも、映画を観たことがきっかけで始めようと思う人がいればうれしい。
(脚本家)(おわり)