岡目八目
(1)アマの力で囲碁界を活性化
(寄稿連載 2015/10/27読売新聞掲載)◇きくち・やすろう
大学生など若手を鍛える囲碁勉強会「緑星会」を立ち上げたところ、小中学生も参加し始め、若い生徒が増えました。そして保護者や子どもたち自身から、プロ棋士を志望する声を聞くようになりました。このため1979年、プロ棋士養成をも視野に入れた「緑星囲碁学園」を発足させたのです。
それから30年余り、山下敬吾、青木紳一、喜久代兄妹、加藤充志、秋山次郎、溝上知親ら巣立ったプロ棋士は40人近くになります。80代半ばの年齢となり、体力的にも潮時かと感じ、2012年に東中野本校を休校としました。一応の役割は果たしたつもりでいました。
そんなところへ旧知の囲碁仲間から、全日本囲碁協会設立の話がもたらされました。
70年代を最盛期に、囲碁人口が減少に向かったことは事実で、首都圏の碁会所が連携した東京都囲碁同業組合が誕生した73年、加盟碁会所は120軒ほどありましたが、徐々に減っていき、組合は昨年3月に解散。最後は十数軒までになっていました。
東京・新宿の歌舞伎町には10軒以上の碁会所がひしめいていましたが、いまは1軒のみというのが、その象徴ではないでしょうか。
囲碁仲間からは、アマチュアの力を結集してこうした現状を転換し、囲碁界が再び活力を取り戻すよう力を尽くしたい、と熱い思いを語られたのです。
生涯を囲碁の世界で過ごしてきた私に異存はなく、最後の恩返しとして旗振り役を引き受けることにしました。大きな夢を帆に受けて協会は昨年4月に船出しました。
(全日本囲碁協会理事長)