岡目八目
(4)棋士はファンへの心配りも大切
(寄稿連載 2005/04/11読売新聞掲載)ここ数年、地元奈良県の高校囲碁部の合宿に参加している。そこで先生方に話を聞くと、大会の在り方に課題があるようだ。
高校生の全国大会は年2回しかない。しかも棋力によるクラス分けがなく、出場するのは上位進出を狙う段位者が中心。級位者は気軽に入りにくい。高校に入学してから囲碁を覚える生徒も多いことを考えると、普及面で不満が残る。級位者にも目配りをしている小、中学生の大会と比べて物足りない。
また、大学生の大会ではプロ棋士の姿をほとんど見かけない。同世代の若手棋士さえ足を運ばない。日ごろ、いかに交流が乏しいかを物語っている。そんな学生たちが社会人になった時に、囲碁界のために協力しようという気持ちになるだろうか。ここに棋士たちが反省すべき点がある。
棋士を育てるには、資金面から底辺を支える人が欠かせない。そうした支援者がいなければ、囲碁界の存続そのものが危うくなってしまう。
棋士は棋力向上に努めるのも大事だが、ファンへの心配りも大切だと思う。近年、プロ野球界がファンサービスに力を入れているように、囲碁界も自らが置かれた立場をしっかり考えるべき時期に来ている。
アマチュアから見ると棋士は雲の上の人。なかなか声を掛けにくい。指導碁などでも、棋士の多くはせいぜい注意点を説明するぐらいだ。棋士の方から一言声を掛けるだけで雰囲気が随分と柔らかくなり、楽しい触れ合いになるのではなかろうか。
韓国囲碁界も同じような悩みを抱えている。棋士やファンがソウル市近辺に集中しているため、棋士たちは地方のアマチュアとの交流が乏しく、囲碁事情もよく知らないらしい。
これからの日本囲碁界の発展は、プロが地方のファンとの交流をしっかりできるかどうかで決まっていくと思う。それができれば、韓国に追いつき追い越す日も遠くないと信じている。
(関西棋院棋士、七段)(おわり)