岡目八目
(1)次の10年へ 頭の鍛錬
(寄稿連載 2016/08/23読売新聞掲載)◇きたがわ・まさやす
70歳になり自分の歩んできた人生を振り返ってみると、28歳で三重県議会議員に就任以来、衆議院議員、三重県知事、大学院教授と生産年齢に当たる40年間を約10年ごとに場面転換してきた。これからは現役の仕事を減らしながら、若い人の手伝いが出来ればと考えていた。しかし物忘れが多くなるなど、このままではお手伝いどころか、お荷物になりかねないと心配になってきました。
そこで次なる10年は他人様に迷惑をかけない健康な心身を維持することを目標に、二つのことを心掛けることにした。一つはウォーキングと筋トレで身体を鍛えること。もう一つは、現役時代に封印してきた囲碁を本格的に再開し、頭の鍛錬をすることです。
身体鍛錬はすでに数年間続けており、やれると思うが、囲碁の方はあまり自信がない。囲碁クラブに入会し、体系的に訓練をすれば多少は上達するのではと思っていたところ、石田秀芳二十四世本因坊が主宰する「秀芳囲碁さろん」の案内を見つけ、早速、入会しました。ここ20年ほどは年に数回打つ程度で現在の棋力が分からない。秀芳先生に打っていただき、三段の認定をしてもらいました。
現役時代はまず肩書ありきの日常だったが、ここでは三段の肩書がすべて。フランクに付き合える雰囲気を楽しませてもらっています。
先日、秀芳先生の紫綬褒章受章祝賀会で大竹英雄名誉碁聖、小川誠子六段と同席し、内弟子時代の思い出などをお聞きしました。得難い経験でした。
次なる10年の第一着は、上々の滑り出しをすることができました。
(早稲田大学名誉教授)