岡目八目

北川正恭さん

北川正恭さん

(3)囲碁は審議の潤滑油にも

(寄稿連載 2016/09/06読売新聞掲載)

 三重県議時代は本会議や委員会の休憩時間によく打った。当時28歳の私は最も若く、周りの県議は親の世代の人たちでした。

 それぞれの会派ごとに部屋があり、政策的には激しくやり合っても、囲碁仲間は別で、一番大きな会派の部屋に集まり和気あいあいの中でよく囲碁が打たれた。時にはその場が審議の潤滑油の働きをすることもありました。

 当時、日本棋院中部総本部の酒井通温氏を筆頭とする酒井四兄弟が普及に力を入れておられ、三重県議会も定期的に指導していただいた。三重県出身の羽根泰正九段にも時々教えてもらった。県庁や市役所の昼休みには碁盤を囲む姿が普通に見られた。県執行部と議会の定期的な碁会や、東海四県の議会対抗試合などもあり、今から思えばのんびりゆっくりした時代でした。

 衆議院議員時代は国会対策委員会の仕事を比較的長く務めた。国対は国会内にいることが仕事で、院内で起こることに瞬時に対応して国会運営をスムーズに進めることが役割だった。常時、国対室にいて、委員会休憩中などに与野党の議員を相手に碁を打つことも仕事の一つでした。

 文部政務次官の時、一日のうちに加藤正夫名誉王座と王立誠元棋聖のお二人に指導していただいたことが、私のささやかな囲碁史のハイライトです。

 工藤紀夫元天元が日本棋院の副理事長をされていた頃、棋院の「幽玄の間」で打ってもらったことも忘れられない思い出です。この頃が一番碁を打った時代でしたが、最近の国対ではあまり碁は打たれていないと聞いて、寂しい思いをしています。

(早稲田大学名誉教授)