岡目八目
(1)アジア大会 課題と教訓
(寄稿連載 2011/02/01読売新聞掲載)◇こう・れいぶん
昨年11月、中国・広州市で行われたアジア競技大会に囲碁が正式種目として加わったことは、日本囲碁界の大きなニュースでした。囲碁をスポーツ競技として捉えることには賛否両論があり、それは今も続いています。
日本代表チームは男子団体、女子団体、ペア碁の3競技に出場し、私はコーチとして同行しました。
サポートする立場から見た日本チームの戦いぶり、そして課題と教訓を考えながら、大会を報告したいと思います。まず、全体的な所感をお話ししましょう。
ペア戦では、予想できなかったことが二つありました。
一つはプロ制度のない北朝鮮が強かったことです。予選で、日本ペアをはじめ優勝候補の中国ペアや、中華台北代表として出場した張栩九段・謝依旻五段ペアにも勝ったレベルの高さには驚かされました。
もう一つは、中国が、あわや予選も抜けられないかというほど苦戦したことでした。決勝トーナメントに残ったのは、中華台北1、韓国2、中国1。日本代表の2ペアは9位と10位に終わりました。
男子・女子の団体戦は、慣れない環境の中で健闘したというのが、私の感想です。
特に男子は、現在の世界戦の状況から分析すれば格上の韓国を相手に、山下敬吾九段が主将戦を制し、井山裕太九段がエースの李世ドル九段に勝ち、残り3局も紙一重の勝負を繰り広げました。
敗れはしたものの、棋士たちの必死な気持ちは強く伝わり、個人的には課題より楽しみを残した結果でした。
女子団体については、改めてお話ししようと思います。
(囲碁棋士六段)