岡目八目

孔令文さん

孔令文さん

(2)「体育感覚」の経験が財産に

(寄稿連載 / 2011.02.08読売新聞掲載)

 アジア大会での囲碁3競技で、日本が獲得したメダルは銅が一つでした。課題として、金メダルを取る意識の不足があげられます。

 例えばペア碁。練習時間が多いほどペア同士の意思疎通をはかることができ、成績が上がる可能性は高まります。中国が年単位で準備してきたのに比べ、日本はネットでの練習と1回の合宿のみでした。

 でも、次は練習時間を増やせばよいという単純な問題ではありません。日本には「ペア戦は囲碁の楽しさを伝えるもの」という考え方があり、一競技として死ぬ気で勝負する感覚が外国より欠けているのは確かです。この善しあしは私には判断できません。

 団体戦でも、中国と韓国は大会に向けた態勢をつくれるという点で、日本と全く事情が違うのです。日本は、国内タイトル戦が基盤にあり、皆で集まって勉強できる状況ではありません。参加棋士は気持ちを高めて戦いましたが、この大会のために他を犠牲にできた中国、韓国とは環境そのものに差があったのです。

 日本は大会への重視度が足りなかったという意見は当然あるでしょう。一方で、許される環境下でできるだけの準備は行ったという見方もあります。両方の考え方があると思います。

 囲碁を文化と捉える日本の考え方は大切です。でも、日本の環境にだけ甘えていては、世界の大会に出場できなくなります。普段より厳しい勝負――体育感覚に慣れるには時間がかかりますが、今回の参加棋士たちがその感覚を十分に味わえたのは事実であり、この経験こそが財産になったのだという気がしています。

(囲碁棋士六段)