岡目八目
(4)日本の良さ守りつつ変わる
(寄稿連載 2011/02/22読売新聞掲載)スポーツとしてのアジア大会への参加は、囲碁界にとって今までにない出来事で、選手にもスタッフにもやりにくさはたくさんありました。でも、日本にとっても大きな意義があった、やってよかったと私は思っています。
大会を通して、「日本の良さとの葛藤」という問題が浮上した気がします。先週お話しした韓国の「勝つための行為」を、日本の環境で育った棋士は絶対にしません。この日本の良さに誇りを持ち、自信を持ち、自分たちの道を曲げるべきではありません。
一方で、金メダルを独占した韓国が素晴らしいことも証明されています。両方の面から見なければならず、韓国から学ぶべきことは必ずあるはずです。ただし、まねをしたら勝てるとも思いませんし、日本の伝統文化としての良さ、個性がなくなってしまいます。
私は、ファンの皆さんにも理解していただき、日本の良さを守りつつ変わっていくことが必要だと思っています。そのための道を、日本棋院も示すべきでしょう。
今回の銅メダル1個という結果は、誰が弱かったということではなく、日本の環境の問題だけでもなく、総合的な結果です。かつての囲碁大国・日本とはほど遠いことは、私の口から言わなくても結果で出ています。まず、これを認めること。「世界と大差はない」「いい勝負だ」と考えていると、現在の状況はまだまだ続くだろうと思います。
今回の経験を貴重な財産とし、勝つにはどうしたらよいのかを真剣に考えるようになれば、そこから次代に向けたテーマが見えてくると思います。
(囲碁棋士六段)(おわり)