岡目八目
(3)リフレッシュも囲碁の夫
(寄稿連載 2016/01/19読売新聞掲載)私たち家族は、台北市近郊の新北市に住んでいます。マンションの14階なので眺めがよく、朝日も奇麗ですし、遠くに山が見えるのが気に入っています。マンション1階には義父の囲碁教室があります。私たちが台湾に来ることが決まる前から「張栩囲碁道場」という看板がかかっていて、義父の強い思いを感じます。
こちらは外食産業が充実していますが、娘たちは私の作るご飯を喜んでくれるので、地元の食材を積極的に取り入れて作っています。クコの実、ナツメなどの漢方食材を使うのも台湾ならでは。見たことのないキノコや珍しい野菜。買い物もワクワクする楽しい時間です。主人が好きな「豆花」というスイーツには家族全員がはまっています。豆乳を寒天で固めたらしいのですが、ほろほろと崩れるくらい軟らかく、ここにタピオカなどをトッピングします。食べるたびに頬を緩めています。
主人も台湾に来てからハツラツとしています。昨年の今ごろは、体調も精神的にもあまりよい状態ではなく対局に臨んでいましたが、最近は碁を打ちたいとの思いがわき上がってくるようです。詰碁も何百問も作り、棋士の研究会に参加しています。
リフレッシュするというのは、囲碁から離れることかと思っていたのですが、「えっ、あなた結局、碁ばかりやってない」という感じです。
主人は10歳で日本に来ましたが、それまでに台湾で大勢の人にお世話になったと言います。台湾ではその恩返しをし、日本では自分のためだけに時間を使って棋士として戦う生活を送る。このリズムが、体調も気持ちも整えているようです。
(囲碁棋士六段)