岡目八目
(4)日本の囲碁界に恩返しを
(寄稿連載 2016/01/26読売新聞掲載)私たち夫婦は、使命を大事にしようと思っています。今まで、囲碁の縁に守られてきた私たちですので、囲碁界のためになること、自分たちで役立てることは何か、といつも考えています。それは、よい棋譜を残すことであったり、普及に努めることであったりと人により違いますし、その時々により変化していくことだと思います。
主人は今、日本棋院の棋士としての立場で、台湾の棋士の方々と交流し、若手を指導できることに誇りを持っています。
私は、祖父が木谷實、両親が小林光一、禮子という囲碁の家に生まれました。
「プレッシャーが大変だったでしょう」と大勢の方に言われますが、親子代々、人と人とのつながりに守られていると感じることばかりです。本当に心からノンプレッシャーだったと言い切れます。それどころか、「五代にわたって棋士を続ける」という亡き母の言葉に、私も思いを馳(は)せるようになりました。
自分の子どもをしっかり育てる。これも、私たち夫婦が大事にしていることです。そして、娘が棋士になり、夢がつながってくれたらと願っています。
将来はどうなるかわかりませんが、今、こうして一緒に囲碁の勉強ができること、2人の娘がそれぞれ、人に言われてやるのではなく、囲碁に魅せられて導かれていることに、何よりも幸せを感じています。
これからの台湾生活で、家族全員がパワーアップして日本の囲碁界に恩返ししたいと思っています。温かく見守っていただけたらと思います。
(囲碁棋士六段)(おわり)