岡目八目
(4)世界に目を向ける若手棋士
(寄稿連載 2014/07/08読売新聞掲載)ぼくは院生たちの碁を見る際、感じたことをそのまま伝えています。ぼくの言ってることは違うのじゃないかと思ってくれてもかまいません。何かのヒントになればいいのです。自分の役割は、野球で言えばバッティングコーチのようなもので、盤上のことをひたすら教えるだけだと思っています。棋士としての心構えとかは、他の師範がやってくれてますので、ぼくの出る幕はありません。
今の院生はかなりレベルが高いのです。しかも年齢が低くて強い子が増えています。若いほど伸びる可能性も多いですから楽しみです。
Aクラスの子たちは、ぼくが何か指摘すると、盤上で返してきます。こう打ったらこうやると検討が進んで行くと、子どもを相手にしているような気がしないくらいです。将来どんな棋士になるのかワクワクしてきます。院生レベルが上がっているのに並行し、若手棋士の台頭も著しいものがあります。
若手棋士たちは一緒に国際棋戦の予選に出ているし、研究会も盛んに行われていて、仲がいいようです。昔のようにライバル心むき出しというのでもなくなってきました。
彼らの目は世界に向いています。国内の誰かより強くなりたいというより、もっと視野が広がっていて、ともに世界を目指す同志だという感覚なのです。ですから、仲間内で争う気持ちより、一緒に研さんして世界に挑みたいという思いの方が強いのでしょう。
まず、国内で上位で打てるようになるのが前提ですが、若手が世界戦で暴れ回る日も近いと思います。期待してください。
(囲碁棋士九段)(おわり)