岡目八目

小山鎮男さん

小山鎮男さん

(1)クイズ番組 次々と制覇

(寄稿連載 2018/08/22読売新聞掲載)

 ◇こやま・しずお

 私は八段の囲碁棋士で、手合からは引退しています。今年、囲碁の普及に功績があったとして大倉喜七郎賞を戴(いただ)きました。

 私には趣味が二つあります。テレビのクイズと小説です。

 初めてクイズ番組に出たのは30歳の時です。出演する日に地下鉄の赤坂見附駅で降りたのですが、テレビに出るという興奮で足が動かなくなり、階段の上がり方がわからなくなって立ちすくんでしまいました。その興奮を味わいたくて、それからも出るようになりました。本職の囲碁とは全く違う分野なので、自分の時間を囲碁の練習とクイズの練習に分けていました。

 それから10年ほどで、多くのクイズ番組に優勝しました。「アップダウンクイズ」でハワイ旅行、「クイズ・グランプリ」ではヨーロッパ旅行を獲得。「ベルトクイズQ&Q」も制し、クイズ王と呼ばれるようになりました。1978年にはチャンピオンが集まる「輝け!!クイズ日本一」でも運良く優勝できました。

 NHKの囲碁番組の講師に抜てきされたのも、クイズの恩恵でしょうか。テレビでは興奮して喋(しゃべ)りまくったことが、評判が良かったようです。怪我(けが)の功名ですね。

 その後は囲碁ブームが起きて、10以上の囲碁教室を作るなど、趣味どころではなくなりました。サラリーマンの人たちがゴルフと碁を楽しむようになり、多くの会社に囲碁部ができました。午後5時過ぎに指導にいったこともたびたびです。

 高輪にあった日本棋院も、1971年に市ヶ谷の8階建てのビルに移りました。多くのタイトル戦が開設され、順風満帆の時代でした。

(囲碁引退棋士八段)