岡目八目
(1)譜面のない囲碁史を刊行
(寄稿連載 2010/02/02読売新聞掲載)◇ますだ・ただひこ
『囲碁 語園』と題した囲碁史の本を、昨年5月、大阪商業大学アミューズメント産業研究所から出した。古代から江戸時代までの史料や文芸から、囲碁にかかわるくだりを拾い集めたものである。
30年ほど前から始めて、集中したのは定年後の十余年。集めた資料は、散文1380冊、韻文は和歌220首、漢詩480首、狂歌400首、連歌、俳諧1600句、雑俳2700句。大判上下2冊で1800ページ、囲碁書にもかかわらず譜面は1枚もない、という代物となった。
資料集めを思い立ったのは、碁の上達に見切りをつけてからである。「ザル碁の上達はこれまで」と悟って、囲碁の文化にさまようことを決めた。古典を読むのは、時間さえかければ誰にでもできることで、才能はいらない。
発行部数はたったのウン百冊、本屋さんにも並ばない書だから、ご覧になった方は少ないと思う。「1人でも多くの読者の目に触れるようにしたい」と、図書館に収蔵してもらうことを考えた。
幸いに国文学研究資料館といった特殊図書館に加え、主要都市にある都道府県立図書館、大学図書館など三十数館が収蔵することを受け入れてくれた。本欄の読者で「ちょっとのぞいてみよう」と思われる方があれば、図書館を通じて見ていただけるはずである。
多くの人に親しんでもらうには、インターネットで公開するのが最良らしい。ただ、1800ページということを考えると、効率的な検索項目を整理する必要がありそうである。指1本でやっとキーをたたく老生には難題。だからまだ思いだけで、これからの課題である。
(囲碁史研究家)