岡目八目
(1)閑古鳥の教室が今は50人
(寄稿連載 2012/09/25読売新聞掲載)◇みむら・ともやす
住まいのある千葉県市川市で子供囲碁教室を始めて、7年になります。近所の碁会所の席亭に頼まれたことがきっかけでした。その頃、私は息子2人を東京・八重洲の囲碁教室に通わせていました。引率し、教室の間は待っているだけ。どうせ待合室に座っているだけなら、自分で教室をやるのもいいだろうと考えたのです。
近くに河野光樹八段が住んでいて一緒にやりたいと言ってくれました。自分が教室を始めれば、強くなりたい子供たちが少しは集まってくるだろうという読みもありました。
ところが、これは勝手読みで、プロの先生が2人で、生徒が5人。そのうち自分の息子が2人という状況。あまりに誰も来ないのでびっくりしたものです。
それもそのはずで、強い子たちは既に教室や道場に通っており、子供の指導という面では駆け出しの私よりはるかに優秀な先生方が教えているのですから。
このままではどうしようもないと考え、全くの入門者から育てることにしました。
入門段階の指導は、碁会所のアマチュアの方々にお任せし、続けたいと思った子供たちが、私の教室に入ってくるというシステムにしようとしたのです。
「入門を無料で教えてほしい」という私の提案に、席亭は難色を示されましたが、「絶対にうまくいくから」と説得しました。そして近所の小学校を回ってチラシを配りました。子供たちは徐々に集まるようになり、今は50人の生徒がいます。プロになりたいという子供もでてきて、すでに院生になった子もいます。
(囲碁棋士九段)