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岡目八目

宮沢吾朗さん
読売新聞 2015/09/15掲載
宮沢吾朗さん

(4)全国行脚した木谷実先生(寄稿連載)

 ◇みやざわ・ごろう
 囲碁行脚といえば、私の師匠の木谷実先生も有名です。
 初めて先生にお会いしたのは11歳の時でした。先生が上村さん(故・邦夫九段)ら3人のお弟子さんを伴って北海道帯広に来られました。そのうちのお一人と3子で対局。子どもながら緊張した思い出があります。その碁を勝たせていただき、プロ棋士への第一歩を踏み出したのです。先生の行脚は北海道から九州まで全国にわたり、有望な子どもを見付けると呼び寄せて内弟子にしました。特に見込みのありそうな子のときは、「今度は鯛(たい)を釣ってきた」とうれしそうにされていました。
 入門した翌年、北海道にお供しました。上野から急行に乗ったのですが、なぜか目的地とは違う長万部行きの切符でした。先生は「長万部」という文字がお好きだったようで、ともかく長万部行きの切符を持って乗車するというユーモアの持ち主でした。
 このとき同行したのが石田さん(二十四世本因坊秀芳)と上村さんでした。弟子を連れて行くのは、社会勉強させようという気持ちがあったのでしょう。先生は訪ねた先々で指導碁を打たれましたが、アマチュア相手でもじっくり時間をかけ、1日1局というのも珍しくありません。そこで同行の弟子が指導碁のお手伝いをするということになります。
 父、四郎の「愛棋家芳名録」によると、東北・北海道行脚は昭和6年(1931年)で一応の終止符を打ちましたが、翌7年春にも網走や遠軽で指導碁を打ったようです。どうやら北海道の居心地が良く、帰京せずに帯広に永住することにしたのでしょう。
(囲碁棋士九段)
(おわり)
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