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岡目八目

水間俊文さん
読売新聞 2014/08/26掲載
水間俊文さん

(3)負けや失敗を恐れない(寄稿連載)

 ◇みずま・としふみ
 囲碁を通じて子供たちに伝えたいことはたくさんあります。勝ち負けに対する免疫力をつけてほしいというのも、そのひとつです。
 「勝ちが全て」という子供が増えています。勝っていれば上機嫌ですが、負けそうになるとたちまち不機嫌になる。気分にむらがあり感情を制御できない。昔からそうだったのかもしれませんが、極端になっていると感じます。
 子供たちが勝ちにこだわるのは、勝つことだけが評価される現代の環境が大きな一因でしょう。同時に、負けや失敗をおそれるあまり、新しいことに挑戦する積極性が薄れてきているのではないでしょうか。失敗すればすぐにリセットできるゲームも、子供の成長に危険な方向性を与えているように思います。
 授業で「先生は今までに千回以上負けてるんだよ」という話をすると、子供たちは「プロなのにそんなに負けたの」と驚き、少しホッとした表情を見せるものです。
 失敗を経験する上で、囲碁は最適です。相手がいますので、「やっぱりやめた」というズルはできません。一度置いた石は動かせませんから、失敗した結果は盤上に残ったままになるわけです。その後も過去の自分の失敗を見ながら対局し続けるのはつらいことですが、碁盤は広いので、落ち着いて別の場所でがんばればいくらでも逆転できます。この経験を囲碁で発見していくことができます。
 失敗を消したり、書き換えたりするのではなく、自分がやったことに真剣に向き合いながら、新たにチャレンジし、失敗を乗り越える力が、囲碁で養われていくのです。
(囲碁棋士七段)
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