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岡目八目

長森義則さん
読売新聞 2014/10/21掲載
長森義則さん

(2)浮世絵 囲碁文化研究の宝庫(寄稿連載)

 ◇ながもり・よしのり
 囲碁文化に関係する資料を収集するようになったのは、日本棋院に職員として勤めて数年たった昭和50年代前半のことです。ある日、1枚の浮世絵を古書店で手に入れたことがきっかけでした。
 それは碁盤を振り上げて闘う一人の武将の姿でした。この作品を見つけた時は、衝撃が走って浮世絵が手から離れなくなりました。店主に、武将が誰かと尋ねると、義経四天王の一人、佐藤忠信との答えでした。
 図書館で調べると、この武将は碁盤を持って闘ったという伝説があり、これを脚色した浄瑠璃や歌舞伎に「碁盤忠信」があることを知りました。軍記物語「義経記」には、忠信の吉野山合戦、京都潜伏、そして壮絶な最期が記されています。
 しばらくして「源氏物語」を題材とする美人画を手に入れました。これを機に浮世絵の勉強を始めると、意外にも囲碁に関する歴史画が多く、浮世絵は囲碁文化研究の宝庫だと分かったのです。
 それからは囲碁図の浮世絵を探し回るようになりました。しかし簡単に見つかるものではありません。古書店などに5回出掛けてやっと1枚あるかないかでした。しかし足を運ぶたびに勉強になり、同じ作品でも摺(す)りや保存状態によって価格が全く違うことも知りました。
 3年ほど後、「琴棋書画図」(美人画)を見つけました。琴棋書画は東洋における画題のひとつで「琴」「囲碁」「書道」「絵画」を指し、四芸を楽しむ人々の姿を描いたものです。
 幽遠な情趣がある琴棋書画は囲碁図の代表のひとつです。
(囲碁美術研究家)
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