岡目八目

長森義則さん

長森義則さん

(3)文化史展で囲碁の奥深さ知る

(寄稿連載 / 2014.10.28読売新聞掲載)

 1988年3月、東京・永田町の国立国会図書館で、「囲碁・将棋文化史展」が開催されました。このような規模での囲碁、将棋に関する文化史展は初めてのことではないでしょうか。全国から大勢の囲碁、将棋ファンが訪れました。

 この頃、私が集めた囲碁資料は70点ほどになっていました。駆け出しの私には、この文化史展が大いに参考になり、改めて囲碁という伝統文化の奥深さを知らされました。静かな河ほど深い、と言います。先人の知恵や技の結晶である伝統文化もまた、奥の深い趣を秘めています。

 私は背中を押された気持ちでした。

 浮世絵展や骨董(こっとう)市に通い、対局風景や碁盤、碁石、碁笥(ごけ)などを描いた囲碁図の浮世絵がどのくらいあるか調べました。

 江戸・明治期を通じ、囲碁図を描いた浮世絵師は約50人。多くは歴史を題材としたり、美人画、歌舞伎絵の中に囲碁が描かれています。

 中でも囲碁図を多作した浮世絵師は、江戸後期に活躍した歌川国貞(三代豊国)で、約30作品。次いで歌川国芳の約25作品でした。二人とも初代歌川豊国の門下で、幕末を代表する画人です。国貞は美人画を得意として多くの作品を残し、国芳は武者絵のほか、風刺画や戯画にも異彩を発揮しました。

 浮世絵に加え、「紙もの」の収集にも力を注ぎました。引札のような古い広告や、宝くじにも囲碁が描かれているのです。しかしそれらは用が済めば不用になり、捨てられてしまう。そう簡単に見つかるものではありません。行きつ戻りつし、あっという間に20年が過ぎました。

(囲碁美術研究家)