岡目八目
(1)小5で安藤先生の内弟子に
(寄稿連載 2010/11/16読売新聞掲載)◇なかおのだ・ともみ
日本棋院の院生師範を務めて、4年目になります。院生制度は、プロ棋士を志望する子供たちを指導育成することを目的としており、師範の責任は重いものがあります。
昔は木谷実先生の木谷道場に代表されるように、住み込みの内弟子制度が盛んで、内弟子をしながら院生となるケースが多かったようです。私も縁があって安藤武夫先生(七段)の内弟子となり、勉強させて頂きました。
私は鹿児島の生まれで、碁を覚えたのは小学3年の夏でした。落ち着きがない子供で、両親が先生に相談したところ、たまたま囲碁が好きな先生で、「碁をやらせてみたら」というひと言が、この道に入るきっかけになりました。
小学4年のとき、第4期棋聖戦第3局が鹿児島市であり、同行された加藤正夫九段に五子で打って頂く機会がありました。そのとき「プロを目指すなら、早く東京へ出て来た方がよい」とのアドバイスを頂き、さっそく春休みに東京の知り合いの所へ。日本棋院に通ってアマ四段の免状をもらい、また安藤先生のお宅での研究会を見学したりして、有意義な時を過ごしました。
小学5年の4月、安藤先生から「出て来ないか」とお誘いがあり、内弟子にして頂きました。当時は、塾頭格の依田紀基さん(九段)を始め、3、4人の内弟子がおり、ほかに通いの弟子もいました。
依田さんが群を抜いて強く、私は三子で全く歯が立ちませんでした。依田さんの勉強量は半端でなく、ある深夜、内弟子の一人がパチリパチリと音がするのでのぞいてみると、依田さんが一人で盤に向かっていたといいます。
(囲碁棋士九段)