岡目八目
(4)秀行塾を進化させた強化策を
(寄稿連載 2007/04/09読売新聞掲載)中国、韓国は若い棋士たちが次々と登場し、国際棋戦で好成績をあげている。日程や開催地など対局環境が厳しくなり、対局は時間が短縮され、スピード化した。勝つためには知力と共に体力も必要なのだ。若い棋士に有利な条件がそろっている。
中国は15歳以下の少年棋士がスイス方式で行う棋戦に、50人前後が参加する。昨年、優勝した周睿羊三段は、名人戦で挑戦者となった。少年たちの層が厚い。
棋戦は基本的には対局者同士の個人の戦いだが、国際棋戦では国家が前面にでてきて、どの国が勝ったかに焦点があてられる。このため国家意識の強い中国は青少年棋士の訓練チームを編成し、強化システムを実行している。棋士はもちろん、総コーチの馬暁春九段も対局日と休日以外は毎日棋院の訓練室に出勤する。トップ棋士たちの対局機会をふやすために、サッカーのJリーグと似たリーグ戦システムを導入し、外国人選手枠を設けジョ薫鉉九段や李昌鎬九段を招へいして韓国流を徹底的に学んだ。現在、中韓は対抗戦を多岐にわたって行っている。
昨年は韓国が中国に学ぶとして、権甲龍囲碁道場などの若い棋士たちが30人のチームを組んで、全員自費参加で2回訪中し、対抗戦を行っている。
日本も若手を中国へ交流に派遣しているが、指導者が同行していない。これでは強化につながるとは思えない。
しかし、日本にも強化システムがあった。1981年から10回余り行われた藤沢秀行名誉棋聖による秀行軍団訪中だ。名誉棋聖の目が届く中で対局が行われ、局後の検討では、囲碁に対する心構えや対局の精神を説き、日中の若い棋士たちに大きな影響を与えた。昨年、一昨年と中国に招かれて中国棋士のために秀行塾が開かれたが、歓迎ぶりには目をみはった。
このシステムを進化させた、日本独自の強化策が出来ることを望みたい。ファンは日本碁界の復活を待っている。
(富士通元宣伝部長)(おわり)